INICIAR SESIÓN「ク、クレア……? おい!」
必死に声をかけるタケルだったが反応がない。
「これはキス待ちじゃな。カッカッカ」
ネヴィアはつまらない冗談を言って笑う。
「な、何をふざけたことを!」
真っ赤になって怒るタケル。
「いやいや、太古の昔からお姫様はキスで目覚めるって決まってるんだゾ!」
シアンもニヤニヤしながら、唇を突き出してキスのしぐさを見せる。
「えっ!? 本当……なんですか? 嘘だったら怒りますよ!」
「あっ! 急がないとクレアちゃん消えちゃうよ! 早く早くぅ!」
いたずらっ子の笑みを浮かべてシアンは煽った。
「えっ!? ちょ、ちょっと!」
「キース! キース!」「キース! キース!」
ネヴィアもシアンもニヤニヤしながら手拍子で煽った。
「ちょっともう! 嘘だったら怒りますからね?!」
タケルは何度か深呼吸し、じっとクレアの整った小さな顔を見つめる。愛おしいクレア……。
目をつぶるとそっと、クレアの唇に近づいて行くタケル……。
そのぷっくりと赤く熟れた唇に触れようとした時だった。
「あれ? タケル……さん?」
いきなりクレアが目を覚ます。
「うぉっとぉぉぉ!」
タケルは焦ってのけぞった。
「ど、どうしたんです……か?」
クレアはタケルに抱かれている事に焦り、真っ赤になって聞いた。
「い、生き返った……。よ、良かった……」
タケルは冷や汗を流しつつも、生き返ったことにホッとしてへなへなと座り込んでしまう。
「なんじゃ、早くやらんから……」「つまんないの!」
ネヴィアとシアンはつまらなそうな顔をしたが、タケルは真っ赤に
「もちろん、私は作られちゃった側だから本当のことは分からないわ。でも、そのストーリーが一番|蓋然《がいぜん》性が高いのよ」 女神は肩をすくめるとジョッキをグッと傾けた。「いやいや、妄想一発で異世界に飛べるならみんな飛んでますよ!」「あら、きっとみんな飛んでるわよ? ただ、それは枝分かれした別の宇宙になっちゃうので私たちには見えないけどね。ふふっ」「そ、そんな……」「宇宙の数は無限。些細な妄想一発で新たな宇宙が作られ、その妄想に合わせて過去に|遡《さかのぼ》って辻褄が合わされてそこに飛ばされるのよ。宇宙は妄想に飢えてるんだわ」 タケルはさすがに冗談かと思ったが、女神の琥珀色の瞳はいたって真剣であり、とてもからかっているような雰囲気でもない。「この世界が僕の妄想でできた僕の世界……。なら僕が最強……ってことですか?」「はっはっは! そんな訳ないじゃない。最強になりたかったら『僕は最強! 僕は最強!』って妄想しなおしなさい。でも……、そんな世界、楽しいかしら?」 女神はニヤッと笑い、またビールを傾けた。「いや……。今が最高なんで、妄想はもういらないっす」 タケルはチラッと、楽しそうにネヴィアたちと話しているクレアを見た。「ならいいじゃない。おめでとう」 女神はジョッキをタケルの前に差し出し、ニコッと優しく笑ってカチンと乾杯をした。 苦しかった社会人生活から紆余曲折を経て今、タケルはついに新たな人生の地平に立っている。深い感慨に浸りながら周りを見回し、目を細めて、タケルは一人一人との絆を胸に刻み、じっくりと噛み締めた。 ◇「今晩はホテルに泊まりな。これ、キーね。明日から地獄の特訓だよっ!」 シアンはカードキーをタケルに渡す。「あ、ありがとうございます。あの……、クレアの分は?」
「んほぉ……。美味い……。肉はやっぱり和牛に限るねぇ……」 シアンは恍惚とした表情でうっとりと目を閉じる。「焼かないとお腹壊しますよ……」 そんなシアンをジト目でにらみながら、ネヴィアは甲斐甲斐しく肉をロースターに並べていった。「大丈夫だってぇ!」 シアンは目を輝かせながら次を取ろうと箸を伸ばす。 カッ! シアンのステンレスの箸を、衝撃音を放ちながら女神が箸でつまんで止める。「あんた! 一人で全部食べる気なの?」 女神は琥珀色の瞳をギラリと光らせ、シアンをにらんだ。「肉は早い者勝ち……」 シアンはキラリと碧眼を輝かせると、目にも止まらぬ速さで次々と箸をロースターめがけて繰り出し、女神は負けじと防衛し続けた。 カカカカカッ! 激しい攻防の衝撃音が部屋に響きわたる。「へっ!?」「ひぃぃぃ」「またか……」 一同は唖然として、この世界の創造者と宇宙最強の二人の、世界を揺るがしかねない攻防を見守った。「隙ありっ!」 シアンは左手を素早く伸ばし、なんと手で肉をつかむ。「甘い!」 女神はテーブルをこぶしで叩き、ロースターの周辺から衝撃波を発生させた。 それはシアンの手を吹っ飛ばし、トモサンカクは宙を舞う――――。 へっ!? あっ!? うわっ! みんなが驚く中を、トモサンカクは光の微粒子を纏いながらクルクルと回り、ドアの方へとすっ飛んで行った。「ハーイ! ピッチャーお持ちしましたぁ!」 間の悪いことにガラララと、ドアが開く。 一同は青くなってそのドアへと飛んでいくトモサンカクを目で追った――――。 くっ! ソリスは瞬時に席からドア前まで移動すると、パシッとトモサンカクをはたいてロースター
「ク、クレア……? おい!」 必死に声をかけるタケルだったが反応がない。「これはキス待ちじゃな。カッカッカ」 ネヴィアはつまらない冗談を言って笑う。「な、何をふざけたことを!」 真っ赤になって怒るタケル。「いやいや、太古の昔からお姫様はキスで目覚めるって決まってるんだゾ!」 シアンもニヤニヤしながら、唇を突き出してキスのしぐさを見せる。「えっ!? 本当……なんですか? 嘘だったら怒りますよ!」「あっ! 急がないとクレアちゃん消えちゃうよ! 早く早くぅ!」 いたずらっ子の笑みを浮かべてシアンは煽った。「えっ!? ちょ、ちょっと!」「キース! キース!」「キース! キース!」 ネヴィアもシアンもニヤニヤしながら手拍子で煽った。「ちょっともう! 嘘だったら怒りますからね?!」 タケルは何度か深呼吸し、じっとクレアの整った小さな顔を見つめる。愛おしいクレア……。 目をつぶるとそっと、クレアの唇に近づいて行くタケル……。 そのぷっくりと赤く熟れた唇に触れようとした時だった。「あれ? タケル……さん?」 いきなりクレアが目を覚ます。「うぉっとぉぉぉ!」 タケルは焦ってのけぞった。「ど、どうしたんです……か?」 クレアはタケルに抱かれている事に焦り、真っ赤になって聞いた。「い、生き返った……。よ、良かった……」 タケルは冷や汗を流しつつも、生き返ったことにホッとしてへなへなと座り込んでしまう。「なんじゃ、早くやらんから……」「つまんないの!」 ネヴィアとシアンはつまらなそうな顔をしたが、タケルは真っ赤に
虹色の光の洪水を浴びながら、しばらく通路を進むとやがて巨大なサーバーが見えてくる。それは十階くらいぶち抜いた、もはや巨大なタワーともいうべきサーバーだった。 ほわぁ……。 タケルはその精緻な虹色の光に覆われたタワーを見上げ、感嘆のため息をつく。光は漫然と光っているのではなく、一定のリズムを刻みながら、塔全体として踊るようにいくつもの光の波を描きながら現代アートのように荘厳な世界を作り上げていた。「ここがジグラートの中心部、|神魂の塔《サイバーエーテル》じゃ。お主の星の全ての魂はここに入っておる」 ネヴィアは|神魂の塔《サイバーエーテル》に近づき、そっとキラキラと輝くクリスタルでできたサーバーをなでた。「えっ!? 全員ここに? じゃあ、僕もクレアもここに……?」「そうじゃ、お主は……あれじゃ」 ネヴィアはキョロキョロと見回すと、少し離れたところのサーバーを指さした。「へっ……? こ、これ……?」 そこには他のサーバーと変わらず、微細にあちこちが明滅するクリスタルがあるばかりである。「よく見ろ! これじゃ!」 ネヴィアが指す光の点を見ると、黄金色の輝きがゆったりと眩しく輝いたり消えそうになったり脈を打っていた。それにとても親近感を感じたタケルは不思議に思ったが、よく見るとそれは自分の呼吸に連動していたのだ。息を吸うと輝き、吐くと消えるようだった。 えっ!? 驚いた刹那、黄金色の輝きは真紅に色を変え、鮮やかに光を放った。 こ、これは……?「どうじゃ? これがお主の本体じゃ」 ネヴィアは嬉しそうにニヤッと笑う。「こ、これが……僕……?」「信じられんなら引き抜いてやろうか?」 ネヴィアはクリスタルのサーバーをガシッと掴む。「や、止めて
シャトルは海王星の中へと降りていく。雲を抜け、深い碧へとどんどん降りていくと白い霧の層に入ってきた。それをさらに碧暗い奥へと降りていくとやがて闇に包まれていく。 ヘッドライトをつけ、まるで深海のような暗闇をさらに下へ下へと潜っていく。「こんなところに……本当にあるの?」 タケルは不安になってネヴィアに聞いた。「普通そう思うわな。何もこんなところに作らんでも……」 ネヴィアはグングンと数値が上がっていくモニターの深度計を見ながら、肩をすくめる。 さらにしばらく降りていくとモニターに赤い点が表示されはじめた。一列に並んでいる点にはそれぞれ四桁の番号が振られている。「あー、うちの星は3854番じゃったな……。お、あれじゃ!」 ネヴィアはそう言いながら点の一つへと近づいて行く。ヘッドライトにはチラチラと雪のような白い粒が舞って見える。「これが……、ダイヤモンド?」「そうじゃが、このサイズじゃ宝石にはならんな。カッカッカ」「これ、もっと深くまで行くと大きいのがあるんだよ? くふふふ……」 シアンは楽しそうに笑う。「ちょ、ちょっと待ってください。そんな深くまで潜れる船なんてないですよね?」 ネヴィアは怪訝そうな顔で聞いた。「僕の戦艦大和ならいくらでも大丈夫! エヘン!」 シアンは意味不明なことを言って自慢げに胸を張る。「ほら、もうすぐ見えてくるぞー」 ネヴィアは面倒くさい話になりそうだったので、聞かなかったふりをして前を指さした。 やがて、暗闇の中に青白い光が浮かび上がってくる。それはまるで深海に作られた基地のようにダイヤモンドの吹雪の中、幻想的に文明の明かりを灯していた。 近づいて行くと全容が明らかになってくる。漆黒の直方体でできた武骨な構造体は全長一キロメートルほどあり、継ぎ目から漏れる青白い光が表面に幾何学模様を
タケルはその美しい輝きに魅せられる。「綺麗……ですね……」 しかし、シアンは余裕のない様子で眉間にしわを寄せ、何やら渾身の力を振り絞り始めた。 徐々に成長していく水の球……。やがて、それは直径数キロの巨大なサイズにまで膨れ上がっていく。 シアンは満足げな表情でふぅと息をつくと、水筒を取り出し、ゴクゴクとアイスコーヒーでのどを潤した。「水玉で……どうするんですか?」「まぁ見てなよ。面白いよ! くふふふ……」 見れば貨物船の輝きが一層増して、まぶしいくらいの閃光を放っている。全長三キロにも及ぶ巨大なコンテナの集合体はノズルスカートを前面に出し、大気と激しく反応しながらマッハ二十の超音速で海王星へと降りてきているのだ。 見る見るうちに大きく見えてくる貨物船。それは吸い寄せられるように一直線に水玉を目指した。「まさか、衝突させるんですか!?」 ネヴィアは叫んだ。マッハ二十とは銃弾の二十倍の速度である。そんな速度で水に突っ込んだら大爆発を起こしてしまう。「ピンポーン! そんなシーン今まで見たことないでしょ? くふふふ、楽しみっ!」 シアンはいたずらっ子の笑みを浮かべて笑う。「いやちょっと、マズいですって! こんなところに居たら巻き込まれますよ!!」「だーいじょうぶだってぇ! ネヴィアは心配性だな。がははは!」 パンパンとネヴィアの背中を叩くシアン。「乗務員はどうなるんですか?」 タケルは恐る恐る聞いた。「テロリストの話があった時点で退避済み。あれは自動運転だよ」「貨物は捨てちゃうってことですか?」「テロリストに汚染された貨物なんて恐くて使えないからね。焼却処分さ」 シアンは渋い顔で肩をすくめる。「でも、貨物船は……もったいないのでは?」「そん







